あとがき

ある時私は蓼川駅のペデストリアンデッキからエスカレータで地上に降りて行きました。すると、後ろに立っていたカップルらしき二人のうちの、女性の無邪気な声が耳に飛び込みました。
「ね、見た?今の人達、何か変じゃない?」
彼氏の方が、何が、と聞くと、彼女は次のような光景を話しました。
男性二人の間に、女性が一人、三人で手を繋いで歩いてた、というのです。
その時にはもう振り返ってもデッキの上は見えない位置だったので、私が実際にその光景を見たわけではないし、それどころか、町の喧噪の中、彼女の話を私が正確に聞き取ったのか、未だに自信はありません。
ただ、その時その光景が頭の中にぴんと張り付いて、私は1つのストーリーを書き始めました。

エーコさんはどうなったのか、主人公の知らないところでどういうドラマが有ったのか、それは私にはわかりません。蓼川でカップルの女の子が見たあの人達がどんなドラマを持っていたのかわからないように。全て私の想像の中の出来事、幻想的な世界です。でも、あの現実の3人がああやって歩いていった先には確かに彼らの人生が有ったように、エーコさん達にもまた、何らかの私の知らないドラマが、存在するはずだと、思います。

2003年
なのり

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